
小さくてもプロ野球で躍動!170センチ前後の身長に負けない小兵プレーヤーたちの活躍
2025年現在、日本プロ野球に所属する選手の平均身長は180.94センチ。ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)や大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)といった長身選手が台頭しており、これまで以上にフィジカルがモノを言うスポーツになりつつある現代野球。そんななか、身長170センチ前後と小柄ながらプロ野球界で存在感を発揮するプレーヤーたちを取り上げる。※トップ画像出典/photoAC

名球会入りを狙う小さな大投手・石川雅規
東京ヤクルトスワローズに在籍する技巧派サウスポー・石川雅規。通算186勝をマークする名球会に限りなく近い大投手だ。しかしながら、2010年まで実際は167センチにもかかわらず、169センチとサバを読んでいたほど小柄なプロ野球選手の一人だ。
石川は、青山学院大学2年時に伝家の宝刀・シンカーを習得するとキレのあるストレートやカーブ、スライダーを交えた配球に磨きがかかり、チームのエースに成長。2001年、東京ヤクルトスワローズに自由獲得枠で入団した。2002年にルーキーシーズンを迎えると、精度がアップしたシンカーを軸に巧みな投球術を発揮して12勝をマークして新人王を獲得。その後もコンスタントに活躍を続けて新人から23年連続勝利という前人未到の偉業を達成。入念なボディーメンテナンスを心がけており、これまで大きなケガをしていないことも強みだ。また、投手でありながら通算135安打を記録するなど、打撃センスも抜群。名球会入りの条件となる200勝に向けて、小さなベテラン左腕・石川の挑戦はまだ続く。
三冠王に肉薄した小柄なヒットメーカー・近藤健介
2023年に開催されたWBCでも2番打者として活躍し、多くの評論家が“現役ナンバー1のヒットメーカー”として名前を挙げる、北海道日本ハムファイターズから福岡ソフトバンクホークスに移籍した近藤健介も小柄な大打者だ。
公称173センチの身長はプロ野球選手としてはかなり小さいものの、卓越したバットコントロールと選球眼がウリの日本を代表する外野手として君臨している。特にFA権を行使してソフトバンクに移籍した2023年は、ホームランと打点の2冠に輝いたうえに打率も.303でリーグ2位をマークし、一時は三冠王も視野に入るほどの活躍をみせた。
日本ハム時代はコツコツと当てにいくタイプの中距離打者だったが、下半身や背中の筋力アップに取り組んだ結果、スイングスピードが大幅に上がって打球に飛距離が付くようになったそうだ。今季も強力打線を誇るソフトバンクの中軸を担い、自慢の猛打をふるってくれるだろう。
浮き上がる直球で真っ向勝負するリリーバー・山本拓実
中日ドラゴンズから北海道日本ハムファイターズに移籍した強気なリリーフ右腕・山本拓実も身長167センチながらチームには欠かせない存在だ。
県内有数の進学校だった市立西宮時代からスピードボールを投げる好投手として注目を集めていた山本は、最後の夏も県大会で敗退したものの2017年にドラフト6位でドラゴンズに入団。下半身強化に取り組んで2022年から本格的に1軍に定着。小さい体をうまく利用した低いリリースポイントから浮かび上がってくるストレートは最速156キロまでアップし、対戦打者を圧倒。ピンチでも動じることなく強気に内角を突くピッチングスタイルは移籍後も変わらず、2024年は自己最多の36試合に登板し、防御率1.82という好成績を残した。プロ入団会見で「自分が活躍して、体が小さい野球少年に夢を与えられる選手になりたい」と力強く語った抱負を有言実行している。
フルスイングで魅了する打てるキャッチャー・森友哉
小柄なプレーヤーは俊足好打のイメージが強いが、埼玉西武ライオンズからオリックスバファローズに移籍した森友哉はフルスイングで観客を魅了している。
身長170センチと決して体格には恵まれていないながら、名門・大阪桐蔭では下級生時代から正捕手に定着。2年時は藤浪晋太郎(シアトル・マリナーズ傘下)とバッテリーを組んで、春夏連覇に大きく貢献した。捕手ながらトップバッターを担い、重心を低くして右足を高く上げる打撃フォームから強烈な打球を連発し、20打数8安打2本塁打で打率.400をマークした。
2014年にルーキーながらプロ1軍デビューを果たすと、持ち前の豪快なスイングは健在のまま確実性の高いミート力をレベルアップさせ、“打てる捕手”として鮮烈なデビューを飾った。さらに2019年には打率.329で首位打者に輝き、23本塁打、105打点という高い数字を残してリーグMVPにも選出された。「体のサイズがハンデだと思ったことはない」と語っている森は、これからもフルスイングを続ける。
鋭いスイングが信条の切り込み隊長・近本光司
2018年にドラフト1位で阪神タイガースに入団した近本光司も身長171センチながら、リーグを代表するスター選手だ。バットの先端を投手側に傾ける独特の構えから力強く振り切るフォームが特徴的で、広い甲子園球場のスタンドに放り込めるパンチ力を持っている。
2019年のルーキーイヤーから開幕戦で先発出場し、初安打初打点をマーク。レギュラーを掴むと、長嶋茂雄(元・読売ジャイアンツ)が持っていたセリーグ新人安打記録を更新する159安打を放ち、36盗塁で盗塁王も獲得。また、オールスターゲームでも新人史上初となる先頭打者ホームランとサイクル安打を達成した。その後も安定した打撃成績を続けており、課題とされてきた守備力も大幅に向上。タイガースにとって欠かせない選手になっている。そんな近本は、自身の身長について「体が小さいので、当てにいく打撃をしたら外野が余計に前に来てヒットの確率がくだる。その頭を越えてやろうと小学生の頃から思っていました」と語っている。その言葉通り、鋭いスイングは近本の代名詞となっている。
身長や体の小ささを苦にせず、プロ野球の世界で躍動する小兵プレーヤーたち。今季もビッグなプレーでファンを魅了させてくれるはずだ。