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Baseball5日本選手権は最高レベルの激戦ー新王者は六角彩子率いる「5STARs」

男女混合5人制の手打ち野球Baseball5の第2回日本選手権が1月13日に立川で開催された。オープンの部では日本代表の六角彩子率いる5STARsが優勝。ユースの部では横浜隼人Agressiveが栄冠を手にした。Baseball5にスーパーバイザーとして就任した斎藤佑樹氏も登場し、会場を盛り上げた。※筆者撮影

Icon img 20200702 114958 井上 尚子 | 2025/01/28

侍ジャパンチャレンジカップ 第2回Baseball5日本選手権

Baseball5は野球振興のため2017年に生まれた男女混合の新競技。野球とは違う魅力を持ったアーバンスポーツとして、世界的な規模で広がりを見せている。

日本も昨年から代表チームが「侍ジャパン」を冠することになり、ワールドカップでは連続で準優勝を勝ち取った。

必要なものは小さいゴムボール1個。外野はおらず、投手も捕手もいない。投手の位置で守る「ミッドフィールダー」がいるのが特徴だ。

空振りはアウト、ファールはアウト、外野フェンスに直接当たってもフェンスを越えてもアウト。必ずしも強い打球ほど良いというわけではなく、男女が同等に活躍できる。

1つの試合は5イニング制で、2セット先取で勝利となる。試合の展開が速く目を離せない競技だ。

クラブ音楽が流れるアリーナでの日本選手権

「前回の横浜武道館もいい会場だったんですが、このアリーナ立川立飛は本当に素晴らしい会場です」と、この競技の草分けで国際的な公認インストラクターでもある六角彩子(5STARs)は感謝した。

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日本選手権会場となったアリーナ立川立飛(筆者撮影)

狭い体育館でも野外でも、場所を選ばずプレーできるのがBaseball5の魅力だが、日本選手権ではアリーナを使用し、コート2面でオープンの部とユースの部が行われる。DJが生でクラブ音楽をかけ続け、実況が二つのコートを行き来して大会を盛り上げる、Baseball5ならではの演出が今年も行われた。

5STARsが初優勝 「事実上の決勝戦」以外も熱戦続出 競技レベルは向上

オープンの部では昨年優勝のジャンク5がいきなりライバル5STARsとの対戦となった。双方が優勝候補であり、昨年も早々に対戦して「事実上の決勝戦」と言われたカードだ。

ジャンク5は日本代表でもある三上駿、島拓也を中心に固い守備を見せる。5STARsでは昨年セカンドチームである「五つ星」で出場していた金城義が新たにけん引役となった。両者譲らぬロースコアゲームとなり、2-0,2-1の僅差で5STARsが激戦を制した。

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5STARsはジャンク5に勝利し昨年のリベンジを果たした(筆者撮影)

それ以外の試合も好カードの連続で、本選出場チームのレベルの高さが窺えた。5STARsは、昨年までチームメイトだった宮之原健率いるSpirit Bondsと準決勝で対戦し勝利した。日本代表で2024W杯ベスト5の辻東倫は今回読売ヴェルディ・バンバータで出場。古巣GIANTSと対戦し、フルセットの末敗れた。

オープンの部決勝は、昨年準優勝のGIANTSと5STARs。またもフルセットの熱戦となり、最後は5STARsが突き放して初の日本一に輝いた。MVPは5STARsの金城義と六角彩子が受賞した。

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MVPを受賞した5STARsの金城(筆者撮影)

ユースの部は横浜隼人の連覇

ユースの部では、横浜隼人高校から3チーム出場。1,2年生が「実力が均等になるようにランダムに分けた」AgressiveとBrave Heartの2チーム、3年生がNEXUS65だ。

NEXUS65の中心となっているのは、昨年優勝したメンバー。昨年優勝時に「チームはいったん解散し、次回の参加は未定」としていたが、再び野球部を挙げての参加となった。

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横浜隼人は3チームが参加しAgressiveが優勝(筆者撮影)

今回の参加チームはほかに「市立船橋5」と「ICHIFUNA5」という2チームや、「日大二高・中京大中京5」という伝統校の合同チームもあった。

昨年も熱戦に湧いたユースの部だが、今年もフルセットや延長タイブレークという熱戦続き。高校生らしく応援にも熱が入り、大会が盛り上がった。決勝戦は横浜隼人Agressive対市立船橋5。4-5,6-3,7-3という点の取り合いを横浜隼人Agressiveが制した。

喜びを爆発させた選手たちは、金メダルを胸にかけてもらって充実の表情。「野球部の練習もやりながら、朝にBaseball5の練習をしていた」と言い、「最初はそれほど仲が良くなかったけど、だんだんチームワークが良くなった」と振り返った。Baseball5の魅力を問われると、「自分の判断で次の塁を狙ってかき回せるところ」と、攻守でサインに従う高校球児ならではの感想も聞かれた。

初出場のSpirit Bondsがオープン・ユースともにベスト4へ

初出場チームの中でも予想以上の健闘を見せたのはSpirit Bondsだろう。もともと埼玉で5STARsに所属していた宮之原健、中瀬祐が東京に活動拠点を移し、昨年立ち上げたばかりのチーム。元ソフトボール五輪代表の渥美万奈も加わり、レベルの高いプレーを見せた。

町田市の都立山崎高校を拠点としており、山崎高校の生徒も参加するようになった。他校の生徒も受け入れながら「Spirit bonds YAMASAKI」としてユースの部にも出場している。

Spirit bonds YAMASAKIは、横浜隼人、市立船橋など野球強豪校の名前が並ぶユースの部で、横浜隼人Brave Heartを破ってのベスト4と健闘し、ユース監督を務める宮之原は笑顔で選手を称えた。

「バットを持ったら強豪チームでも、Baseball5ならわかんねえぞ、というところ」と宮之原が言う通り、Baseball5では誰にでも大きな可能性があることを示した。

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ベスト4に輝いたSpirit bonds YAMASAKIと監督の宮之原健(右)(筆者撮影)

オープン・ユースともベスト4という成果。出来て間もないチームでも技術指導は本格的で、宮之原は「一から始める人ばかりだったので、慣れてもらう、好きになってもらうのが一番だと思っていました。週4くらいでずっと練習しましたね」と振り返った。他チームの選手も練習に参加することもあり、日本代表選手とプレーする機会もあって、高め合えたという。

まだまだ始まったばかりの新競技では、練習環境も実戦も自分たちで作ることの方が多い。チームが違っても協力し合い、Baseball5の普及に力を合わせる。協会も選手も審判も、新競技を創っていく仲間なのがこの競技だ。

大会運営には課題も

斎藤佑樹氏をスーパーバイザーに迎え、Baseball5競技では日本最高峰の試合が繰り広げられた一日だったが、まだまだ課題は多い。

朝9:30のセレモニーから始まった大会だが、14試合と閉会式を終えたときには20:30を超えていた。3試合で6セットを戦って優勝した5STARsの六角彩子は「Baseball5は一日3試合出来ると国際的にも決まっているので」と述べたが、長丁場の疲労はかなりのものだったろう。

日本一を決める決勝戦の時点では、既に他チームの多くが帰ったあと。観客が少ないのは勿体なかった。観客の多くは選手とその関係者とはいえ、大会のありようはこれから変えていくべきものの一つだろう。

観客からは「音楽の音が大きくて競技の説明も聞こえない」「どうせならボールに触れるとか、体験できるエリアがあったら」などの声が聞こえた。

参考になる意見は取り入れて、「見て楽しい」「やって楽しい」スポーツとして浸透していってほしい。

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