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川崎フロンターレ“中村憲剛”39歳で経験した大怪我から大復帰を遂げるまでの301日【前編】

2020年シーズン限りで現役を退いた、川崎フロンターレのバンディエラ、中村憲剛。配信サービス「DAZN」では、2024年12月14日に行われた引退試合に向けて配信された、中村選手の大怪我から復活までに密着したドキュメンタリー「RESTART 中村憲剛-帰還までの301日-」を特別再配信。39歳の男が歩んだ301日にも及ぶ復帰までの道のりを本人とともに振り返る。※トップ画像出典/Getty Images

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39歳で初めて負った選手生命を脅かす大怪我

2020年8月29日、Jリーグ川崎フロンターレの本拠地である等々力競技場のスタンドからは、大きな拍手が送られていた。その先にあったのは、サポーターがカムバックを待ちわびた中村選手の姿。川崎フロンターレ一筋、39歳で初めての大怪我を乗り越え、およそ10ヵ月ぶりにピッチへ帰ってきた中村選手は「この場所がやはり最高だなと、改めて感じることができたのが今の自分にとって1番うれしかった」と語る。サポーターは口々に 「ずっと待っていた」「みんなのヒーロー」「チームの歴史みたいな存在」と、中村選手の復帰を歓喜した。そんな愛され続けているバンディエラ。復帰試合で中村選手が見せた笑顔の裏には、ここへ辿り着くまでに直面した幾多の試練があった。

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출처/Getty Images

2019年11月2日、明治安田生命J1リーグ第30節サンフレッチェ広島戦。川崎フロンターレは残り5試合で首位との勝ち点差8、3連覇に向けてひとつも負けられない状況。1対0とリードで迎えた64分、2日前に39歳になったばかりの中村選手を悪夢が襲った。

相手選手がトラップをする瞬間を狙ってボールをカットしたとき、左膝が接触しピッチに倒れ込んだ。中村選手はこのときのことを「バキバキという音が聞こえた。痛すぎてこれはもうダメだと、自分で交代のバツ印を出しました。後で映像を見返したら18回くらいバツ出していましたね」と苦笑しながら振り返る。1点のリードを仲間に託し、担架に乗せられてピッチを後にした。その4時間後、「左膝前十字靭帯損傷」という診断結果が告げられる。

再びピッチへ立つために下した大きな決断

前十字靭帯は膝関節の中にあり、膝を支え安定させる役割を果たしている。靭帯が損傷したままでも日常生活は送れるが、サッカー選手を続けるためには手術以外の道はなかった。たとえ再建手術を受けても、再びプロ選手として復帰するには1年近いリハビリが必要になる。39歳という年齢の中村選手にとってそれは、容易なことではなかった。

正確な診断結果が出る前に膝をチェックしたチームドクターからも、前十字靭帯損傷の可能性は指摘されていた。「そのときからある程度、覚悟はできていました。膝を冷やしながらどうやって戻っていくかという精神的なリカバリーを考えた」と当時の心境を語る。

中村選手を襲った怪我は、サポーターにも大きなショックを与えた。年齢のこともあり、そのまま引退してしまうのではないかという不安もあったが、元気にピッチへ戻ってきてくれるのを祈るしかなかった。過去に同じ怪我を経験したチームメイトの小林悠やジェフユナイテッド千葉の田坂裕介は「大丈夫、絶対に治るから」と、前向きに励ました。その言葉に救われ、中村選手は膝の手術を受けることを決意する。負傷から20日後の11月22日、およそ2時間半に及んだ手術は無事成功した。

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출처/Getty Images

リハビリの日々のなか、さらに強くなった復帰への想い

リハビリは手術の3日後から始まった。ギプスで固定されていた膝は筋肉が固くなりゆっくり曲げることも困難な状態だった。しかし、手術6日後には松葉杖を使わずに歩く練習を開始。「歩くことがこんなに楽しいのは忘れていた感覚」と喜びを語った。リハビリを着々とこなす日々のなかで、うれしい出来事もあった。等々力競技場で行われる試合観戦の外出許可が出たのだ。

負傷から28日目、怪我をしてから初めてサポーターの前に姿を現すと、大チャントが巻き起こる。自分の居場所はここだと改めて感じられた瞬間。川崎フロンターレのチームメイト、スタッフからは、寄せ書きしたユニフォームも贈られた。この日、中村選手はたくさんの人から勇気をもらい、必ず等々力競技場のピッチに戻ることを強く決意。病室に戻った中村選手は、来年の川崎フロンターレのカレンダーを手にし、自分が載る8月のページを見ながら「復帰はこのくらいの時期かな」と呟いた。

12月6日、負傷34日目で退院。サッカー選手として復帰するための本格的なリハビリがスタートする。このときの心境を中村選手はこう語っている。「本当に大丈夫なのかという気持ちはある。20代の選手でも同じ怪我をしてパフォーマンスを戻せるかわからない。それを39歳の選手が40歳になる年に復帰しようとしている。そのとき自分がどういうパフォーマンスをできるのか。年齢は関係ないと言いたいが、そればっかりはわからない」。ここからおよそ9カ月にも及ぶ過酷な戦いが続くことになる。

DAZN『【12.14引退試合】RESTART 中村憲剛-帰還までの301日-(特別再配信)より

※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています