天才打者・清原和博が人生で初めて味わった挫折「打席に立つのが怖い」ヒーローになれなかった自分を変えた挑戦とリベンジ
「甲子園通算13本塁打」という40年経った現在もやぶられない記録を打ち立てた後、プロ野球界屈指の天才スラッガーとして活躍した清原和博。歴代5位となるプロ通算525本塁打、オールスター史上最多7度のMVP獲得と、球史に名を刻む輝かしいキャリアを築いた。そんな清原選手が、配信サービス「Lemino」のドキュメンタリー番組『Number TV』にて、野球人生の原動力となった「忘れることのできない敗北」について口を開いた。※トップ画像提供/NTTドコモ Sports Graphic Number
苦しさと隣り合わせだった強豪校PL学園の日々
1983年、清原選手は名門PL学園での寮生活をスタートさせた。少数精鋭の練習スタイルに惹かれて、その門をくぐったものの、入学後は想像もしていなかった試練が待っていたという。
「あらゆることにおいて人生の初体験だった」と振り返ったのは、野球以外に課された炊事・洗濯などの家事や、先輩のスパイク磨きといった雑務。親元を離れ、厳しい規律に縛られるなか、清原選手は入学して間もない練習試合で、鮮烈なデビューを飾る。
「無我夢中で振ったら当たった」と、同世代の最高峰の投手から二塁打を放った活躍を皮切りに、清原選手は1年の夏から5度甲子園に出場。3年で迎えた夏の甲子園では全国制覇を果たしている。
画像提供/ NTTドコモ Sports Graphic Number
春の甲子園での敗北が最大のターニングポイント
番組内で清原選手の前に、高校球児として甲子園のグランドに立つ姿を写した1枚の写真が置かれた。野球人生で味わったことのない恐怖や悔しさに襲われた瞬間について、清原選手が振り返る。
清原選手が“挫折地点”として言及したのは、3年生として迎えた春の甲子園準決勝。無名の公立高校のエースによって、清原選手は三奪三振を奪われる。最終打席で自身へ投げ込まれた、ボールぎみからストライクに入っていく投球を振り返り「あれはもう手が出なかった」と悔しさを滲ませた。ノーマークだった投手に春夏連覇の夢を絶たれ、思わず心が折れたという。
「初めて、打席で怖くなった。普通、ピッチャーの球は球速がだんだん落ちてくるんですけど、そのままズドーンと来ましたから『これを、どうやってバットに当てるんやろう』という感覚にさえなった」と、当時受けた衝撃の大きさを明かした。
挫折から前進するきっかけは「仲間との約束」
夢破れたその日、清原選手はキャプテンの松山氏とともに室内練習場に駆け込む。そして、マシンの球速を相手投手以上の時速150kmに合わせ、ひたすらボールを打ち続けた。敗戦の悔しさを胸に、2人が交わしたある約束がある。
画像提供/ NTTドコモ Sports Graphic Number
「『これから毎日バット振ろうや、夏の甲子園終わるまで』とね。松山とずっと、練習終わった後、お互い体から湯気を出しながら振ってた。一人じゃ振り切れてなかったと思うんですけど、キャプテンと4番が率先してやっていて他のメンバーもそれにつられてやったからこそ、甲子園の優勝があった。あの時代の高校生では、僕と松山が1番バットを振った自負があります」
清原選手は、バットにまつわる小さい頃の父親との思い出も口にした。電気店を営んでいた父親が、決して楽とはいえない経済状況のなか、野球少年の息子のために一番高価なバットを贈ったのだという。「バットは自分の刀といっしょ」という哲学のもと、その刃を仲間とともに研ぎ澄ませていった。
最後の甲子園で清原選手の心を支えていたもの
春の敗戦を通して打力を磨き、真の4番打者へと成長した清原選手。「1年365日を寮生活でいっしょに過ごしながら、そのなかで4番を任されるわけですから、みんなの信頼も厚かった」と、チームメイトとの絆も実感していた。周りからの大きな期待を受けながら、清原選手は、どのようなものを支えとして甲子園を戦ったのか。
「やっぱり、練習ですよね。人に負けない練習量と、人に負けない気持ち。練習を積み重ねることによって、どんどん気持ちが強くなっていくし、自信にもなる。練習以外ないと思います」
挫折を成長への原動力に変えた清原選手。人生最大の悔しさを乗り越えたからこそ、甲子園のみならず、プロ野球界でも大きく活躍の場を広げていく。
「挫折は、『自分自身をもっともっと深く掘り下げて、自分を成長させてくれる』。大きな甲子園という舞台で感じた挫折がなければ、僕のプロ生活はなかったですね。あの挫折があったからこそ、夏の甲子園優勝もあったし、ホームラン記録も作れたし、プロでの525本もあったと思います」
『NumberTV』 挫折地点~あのとき前を向いた理由~
タイトル:#2 清原和博
配信日:2024年9月26日(木)0:00~ 全24回配信(月2回配信予定)
콘텐츠: トップアスリートの「挫折」と「復活」をテーマにしたドキュメンタリー番組。過去の写真が飾られた特別な空間(Number Room)で、アスリート本人がこれまでの人生を振り返り、挫折の瞬間や前を向けた理由について語る。
※記事内の情報は配信時点の情報です