日本で敵なしでもMLBで無双できるとは限らない!日本人投手に立ちはだかる“課題”とは
日本では敵なしでも、MLBでいきなり無双できるわけではないのはなぜなのか?元・北海道日本ハムファイタース内野手で解説者の杉谷拳士が、日本人投手がMLBで活躍するための課題について徹底分析した。※トップ画像出典/MLB Photos via Getty Images
「あの山本由伸がここまで苦戦するとは誰も思わなかった」
かつて対戦したこともあるという杉谷は「あの山本由伸がここまで苦戦するとは誰も思わなかったじゃないですか」と語った。
NPBで3年連続となる「沢村栄治賞」を引っさげ、ロサンゼルス・ドジャースに加入した山本由伸投手を例に挙げ「メジャーのレベル高っ!」と驚く。それほど日本人投手がMLBで大活躍するには、いくつもの高いハードルがあるようだ。
先発ローテ入りへ中4日という登板間隔の短さ
日本人投手が克服するべき課題を挙げていったのは、MLBジャーナリストのAKI猪瀬。第1に挙げたのは「登板間隔の短さ」だと指摘する。「MLBの先発投手はローテーションの間隔が非常に短い。普通、5人の先発投手で回るので、MLBでは中4日、もしくは中5日で投げていく。一方、NPBは中6日が一般的なので、酷使度合いではMLBの方が大変だ」とコメント。マイナー時代から何年も血を吐くような努力をして、投手たちが築き上げた地位だという。
ただ、過酷な登板間隔を「変えたほうがいい」と主張する選手もいる。サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手だ。自身のSNSなどを通じて声高に問題提起しているが、いまだに登板間隔は変わっていない。日本人投手にとって「中4日」が、最大の壁になっているのは間違いない。
選手の体力をすり減らす長距離移動と過酷日程
次にAKI猪瀬が言及したのはスケジュール面。「MKBの場合は、シーズン162試合をNPBと同じようなスケジュールで消化するので、日程を見ただけでも、タフさが分かる」と、「MLBの過酷日程」を挙げた。
大谷翔平選手が所属するドジャースでは、本拠地ロサンゼルスから東海岸のニューヨークまで、一般的な飛行機だと約6時間弱かかる。「毎日のように3連戦終わったら飛行機に乗って移動すると、シーズン終了時は、だいたい地球を約2周分移動していることになる」とMLBの長距離移動の実態を明かす。
シカゴ・カブスの鈴木誠也選手(出典/Getty Images)
杉谷もシカゴ・カブスに所属する鈴木誠也選手の話を紹介。「移動が一番大変だった。試合が終わってすぐ乗らなきゃいけない。寝て起きたら、すぐ球場みたいな。試合前は練習時間なのに、とにかく寝る時間に充て、コンディションを優先していた」と、体も気持ちもタフでないと務まらないと現場だということを強調した。
データ収集システムで投手の特徴が試合ごとに丸裸に
また、データ取得法でもMLBとNPBには差がある。AKI猪瀬は、「日本をはるかにしのぐデータ分析」を挙げた。MLB全球場には「スタットキャスト」というデータ収集システムが導入されていて、変化球の投球割合や、コース、スピードなど投手の特徴が試合ごとに丸裸にされているという。
「ボールの質の良し悪しはコスタリカの政情を見ろ」という都市伝説が生まれたワケ
MLBの公式球について、カブスの今永昇太は「全部均一で同じボールがくるわけじゃないので、さっきまでいい感じで投げたのに、またゼロに戻ってしまったみたいな感覚になる。それに慣れるのに、あともう少し時間がいる」とキャンプ中に証言していた。実は、日本の公式球はほぼ均一だが、アメリカは作りにムラがあり、一つひとつの公式球の感触が違うという。AKI猪瀬は「MLBの公式球は、すべて中南米の小国コスタリカで作られている。手作業が入る作業が比較的アメリカの公式球には多い」と話す。
コスタリカでは、政情が不安定になると「ボールなんか作っているヒマがない」とばかりに粗い公式球が生産される。逆に政情が安定すると、きめ細かい素晴らしい公式球が出てくというのだ。「『ボールの質の良し悪しはコスタリカの政情を見ろ』というのが、MLBファンの都市伝説の一つ」とAKI猪瀬さんは話した。これまで握り慣れた球とは違う球でMLBを投げ抜かなければならない日本人投手にとって、どれだけ早く新しい球に慣れることができるかが課題になるようだ。
「ABEMA MLB’s ON FLEEK』
タイトル:#4「大変だよ!日本人ピッチャー」
配信日:2024年5月10日(金) 12:00 〜 12:15 毎週金曜に配信
内容:日本人選手の見どころや独自の情報などMLBをもっと見たくなる情報を週1で発信。