
投手力の光と影、攻撃力不足が招いた低迷ーー埼玉西武ライオンズ、再起に向けた西口監督の采配に注目
1980~90年代に黄金時代を築き、その後も松坂大輔や菊池雄星といった球界を代表するピッチャーを輩出してきた埼玉西武ライオンズ。ここでは過去の球団の投手データを元にしながら、埼玉西武ライオンズの投手起用の変化や分業化の歴史を振り返ってみたい。※イラスト/vaguely

2005年、エース松坂の活躍もリリーフ陣の不調で低迷
2004年に就任した伊東勤監督は、プレーオフを勝ち上がって日本シリーズを制覇し、12年ぶりの日本一を成し遂げた。MLBに移籍した松井稼頭央に代わってポジションを掴んだ中島宏之をはじめ、カブレラ、和田一浩らを擁する打線と実力派が揃う投手陣の活躍で、連覇への期待も高まっていた。しかし開幕ダッシュに失敗したチームは、その後も低空飛行を続け、借金2の3位でシーズンを終えることとなった。エースの松坂大輔は脅威の15完投を含む14勝、西口文也が17勝、帆足和幸が13勝を挙げたが、その後を投げるローテーション投手の駒不足と、森慎二、豊田清らのリリーフ陣の不調も響き、チームとしては勝ち星を伸ばすことはできなかった。完投数に目を向けると松坂が15完投(うち3完封)、西口が3完投(うち1完封)、帆足が3完投(うち2完封)のほかに、中継ぎと先発をこなした大沼幸二が1完投を記録している。
2015年、開幕5連勝も13連敗で順位を落とし、最終的に4位
2007年まで監督を務めた伊東に代わって、2008年には渡辺久信監督が就任。就任1年目で日本一に輝くも、その後は優勝に手の届かないシーズンが続いた。そして2014年には、常勝時代をコーチとして支えた伊原春樹氏が12年ぶりに監督に就任するも、開幕からの低空飛行を受け、6月初旬に休養を表明。田邊徳雄監督があとを任せられるも、5年ぶりのBクラス(5位)でシーズンを終えた。田邊監督に率いられた2015年のチームは、開幕から5連勝を飾りながらも、7月には球団ワーストの13連敗で順位を落とし、勝率5割の4位でシーズンを終了。なお、このシーズンをもって西口文也が引退している。
このシーズンの勝ち頭は十亀剣が11勝、のちにMLBに移籍する菊池雄星と牧田和久がそれぞれ9勝を記録。リリーフ陣に目を向けると、67試合に登板の武隈祥太、72試合に登板の増田達至から62試合に登板の高橋朋己につなぐ勝ちパターンを確立。それぞれの防御率も2点台後半から3点代前半とまずまずの成績を残している。その反面、完投数はやや少なめ。故障により出遅れた岸孝之は5完投を記録しているが、あとは十亀、牧田(うち1完封)、ルブランが1完投を記録しているのみだった。
2024年、攻撃力不足が低迷の原因に。主力選手流出の影響も
田邊監督に代わり、2017年に辻発彦が監督に就任。山川穂高、源田壮亮、外崎修汰らの強力打線を形成したチームは、2018年から2連覇を達成した。辻監督が2022年までチームを指揮した後、2023年からは松井稼頭央が監督に昇格。松井体制の1年目は5位に終わり、2年目はさらに成績が低迷し、最下位に沈んだ。松井監督はその後、5月末で休養を発表。GMの渡辺久信がシーズン終了まで監督を務めることとなった。
チーム低迷の最大要因は、かつてないほどの攻撃力不足だ。チーム打率.212、60本塁打、350得点はいずれもリーグ最下位だった。連覇を支えた主力選手がFAで流出し、代わりとなる選手が育っていないことも低迷につながっているだろう。その一方で投手陣に目を向けると、エース高橋光成が勝ち星なしの11連敗でシーズンを終えた点は誤算と言えるが、ルーキーの武内夏暉は10勝をマークして新人王を獲得。今井達也は2年連続の2桁勝利、隅田知一郎も9勝を上げるなど確かな実力を示した。リリーフ陣については、成績の伸び悩んだ投手が目立ったものの、佐藤隼輔が45試合登板で防御率1.69と一人気を吐き、平良海馬や抑えのアブレイユは安定した投球で、少ない援護を守り切った。完投数は隅田と今井が2完投、武内と青山美夏人が1完投を記録しているが、リリーフ陣のコンディションが不安定だったことも、先発投手の続投を選ぶ一因になったといえそうだ。
過去の栄光と現状のギャップ、西口監督の采配に注目
2005年の松坂大輔の15完投をはじめとして、埼玉西武ライオンズの20年を振り返ると、エースには長いイニングを任せる傾向があった。しかし、時代の流れとともに全体のイニング数や完投数は減少傾向にあり、分業化を進めながらチームの強化を図ってきた点が垣間見える。しかし、“平成の怪物”と称された松坂と比べるのは酷かもしれないが、過去には西口文也や菊池雄星といった名投手も輩出してきたチームの投手陣としては、現状物足りなさを感じる。昨季はリリーフ陣の安定感が不足していたことも最下位に低迷した要因の一つといえるだろう。かつてタレント揃いだった西武投手陣の一翼を担った西口新監督の采配に注目だ。