大谷翔平が踏み入れた未知の領域 「50-50」、三冠王、WS制覇……歴史的シーズン完成への可能性
メジャーリーグの2024年シーズンも終盤を迎え、各地区では優勝争いやプレーオフに向けての戦いも注目を集める。そんななか、ドジャースの大谷翔平投手は8月に12本塁打15盗塁を記録して、史上6人目の「40-40」を成し遂げた。野手専念のドジャース1年目を過ごす大谷は過去最高の打撃成績でシーズンを送るなか、12年ぶりの三冠王や「50-50」への挑戦、世界一に向けての戦いなど、ドジャースの選手として新たな領域に足を踏み入れた。※トップ画像 出典/Getty Images
8月序盤を襲った打撃不振
大谷は今季、4月に月間打率.352を記録し、初のシーズン3割を達成した2023年をしのぐペースで首位打者争いに参戦した。そんななか、8月に大谷を襲ったのが打撃不振で、4月からキープし続けてきた打率が3割を切り、.290まで急降下した。
大谷も試合後のコメントで「100%自分の動き、技術的な部分かなとは思います」と自身の状況を明かし、「(打席で)構えている段階でいい未来があまり見えてない感じがする」と不調を認めるなど、開幕から見せていた勢いに陰りが出てきたかに見えた。
そんな大谷だが、2024年シーズンを語る上で外すことができないのがスピード面の進化。シーズン途中からムーキー・ベッツ内野手の不調に伴い1番に固定された大谷だが、ベッツが復帰以降も引き続きトップバッターに指名された。
7月に12盗塁を決めた大谷は8月、さらに盗塁のペースを加速させ、8月3日(日本時間8月4日)のアスレティックス戦で1試合3盗塁を決めて日本人初の「30本塁打30盗塁」を達成。その後も四球などで出塁し積極的に次の塁を狙うシーンがあり、ドジャースの1番として今できる役割に徹するチームプレーヤーとしての姿が見られた。
출처/Getty Images
「40-40」を劇的満塁弾で達成
そして、本塁打、盗塁を順調に積み重ねて迎えた8月23日(同8月24日)には一つの金字塔を打ち立てる。第2打席の出塁後に今季40個目のスチールを成功させていた大谷は、9回裏満塁の場面で右中間へ圧巻のサヨナラ40号はグランドスラム。
今季出場126試合目での「40-40」達成は史上最速であり、パワーとスピードを積み重ねた2024年の新たな姿でまた一つ日本選手では未踏の域に達した。その後メジャーで初となる「43本塁打43盗塁」に到達し、引き続き数字を伸ばしている。
9月に入りシーズンも佳境を迎えていくなかで、大谷にはさらなる領域として「50-50」達成が視界に入ってきた。すでに盗塁はキャリアハイを更新した大谷は、本塁打も9月8日(同9月9日)にエンゼルス時代の2021年に記録した46本に並んだ。
今季は野手専念のシーズンで大きな故障がなくDHとして出場を続けており、終盤までこのペースを維持できれば自身初の50本超えも可能性十分。ドジャースの歴代では2001年にショーン・グリーン氏が記録した49本が球団最多となっており、大谷が移籍1年目からドジャース史を塗り替えるのかは注目である。
출처/Getty Images
三冠王やWSに向けても期待
また、今季の大谷は打撃3部門でタイトルの可能性を残しており、8日(同9日)時点で46本塁打はマルセル・オズナ外野手(ブレーブス)に9本差をつけてナ・リーグ首位。また打点でも自己最多を更新し101打点で、ウィリー・アダメズ内野手(ブルワーズ)とその座を争っている。
カギを握るのが首位打者争いで、8月に打率を下げた大谷は、現時点で打率.291で、ルイス・アラエス内野手(パドレス)の.315からは少し離された。終盤で再びシーズン序盤に見せたようなヒット量産が見られるかが、三冠王獲得に向けては焦点となる。
さらに、大谷にとって個人での戦いとともに選手としてのモチベーションとなるのがチームの世界一を目指した戦い。エンゼルスから常勝軍団のドジャースへ移籍した今季は開幕から首位を走り続け、投手陣に故障者が続出した7月に苦しんだものの、ここまではナ・リーグ西地区を順調にリードする。
9月中旬には怪我のためマイナーで調整を続けていた山本由伸投手の復帰も見込まれており、今季からドジャーブルーのユニフォームに身を包んだ日本選手2人でのプレーオフ出場も視界に入る。大谷、山本がどのような躍動を見せるのかもドジャースの勝ち進みに関わってくる。
출처/Getty Images
大谷は8月序盤に苦しみながら、磨きをかけた足を武器に、バリー・ボンズ氏やアレックス・ロドリゲス氏などメジャー史に残るスラッガーに肩を並べる偉業を成し遂げた。さらに、前人未到の「50-50」やメジャーでは2012年のミゲル・カブレラ氏以来の三冠王も視界に入れるなか、最終的にどのような成績でシーズンを終えるのかは注目となる。
そして、その先にはドジャースのプレーオフやワールドシリーズ制覇に向けた戦いも進んでいく。今年も新たな伝説を作ってきた大谷翔平の2024年がクライマックスを迎える。