パリ五輪男子サッカーは3連勝で予選首位通過 準々決勝はスペインと再戦
1996年のアメリカ・アトランタ五輪から8大会連続出場となったサッカー男子日本代表。自国開催ながらベスト4で涙を飲んだ東京五輪の雪辱を晴らし、さらには1968年のメキシコ五輪以来56年ぶりのメダル獲得を目指し、23歳以下の選手たちが奮闘した。ここでは大岩剛監督が率いた若き日本代表チームの戦いを総括する。※トップ画像出典/Getty Images
予選リーグは、南米予選でブラジルを破り、アルゼンチンとも引き分けて1位で通過したパラグアイ、U-23アフリカ・ネーションズ・カップの3位決定戦をPKで勝ち抜いたマリ、UEFA欧州U-21選手権2023でベスト4と躍進し、本戦出場を決めたイスラエルと同組のグループD。
パラグアイとマリは2004年のアテネ五輪以来、イスラエルは1976年から48年ぶりの五輪の舞台となった。なお、パラグアイは2004年のアテネ大会で銀メダルを獲得している。
日本代表の状況について
半田陸(出典/Getty Images)
大岩剛監督が指揮を採るU-23日本代表は、初戦直前で負傷により登録抹消となったDF半田陸(ガンバ大阪)をはじめ(代わりに山田楓喜がメンバー入り)、海外クラブと移籍交渉中により五輪参加が見送られたMF松木玖生(選考当時FC東京)、さらにA代表常連のMF久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)、GK鈴木彩艶(パルマ/イタリア)など、同世代の主力級の選手の一部が、クラブからの許可が降りずに参加できない状況に。
久保健英(出典/Getty Images)
そういった制約はあったものの、パリ五輪行きの切符を賭けた大会・U-23アジアカップ カタール2024で躍進したGK小久保玲央ブライアン(シントトロイデン/ベルギー)、DF木村誠(サガン鳥栖)、MF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)、MF荒木遼太郎(FC東京)、MF斉藤光毅(ロンメル)、FW細谷真大(柏レイソル)らは順当にメンバー入りし、オーバーエイジ枠を使わず、純粋な23歳以下の選手のみ18名で本大会に臨んだ。
출처/Getty Images
パリ五輪でオーバーエイジ枠を使わないチームは日本のみとなった。なお、本大会のメンバーにおける海外クラブ所属の選手は18名中10名におよんだ。
代表登録メンバー
GK
1. 小久保玲央ブライアン(シントトロイデン/ベルギー)
12. 野澤大志ブランドン(FC東京)
DF
4. 関根大輝(柏レイソル)
5. 木村誠二(サガン鳥栖)
15. 高井幸大(川崎フロンターレ)
21. 内野貴史(デュッセルドルフ/ドイツ)
MF
6. 川崎颯太(京都サンガF.C.)
7. 山本理仁(シントトロイデン/ベルギー)
8. 藤田譲瑠チマ(シントトロイデン/ベルギー)
13. 荒木遼太郎(FC東京)
14. 三戸舜介(スパルタ/オランダ)
19. 植中朝日(横浜F・マリノス)
20. 山田楓喜(東京ヴェルディ)
FW
9. 藤尾翔太(FC町田ゼルビア)
10. 斉藤光毅(ロンメルSK/ベルギー)
11. 細谷真大(柏レイソル)
17. 平河悠(ブリストル・シティFC/イングランド)
18. 佐藤恵允(ブレーメン/ドイツ)
第1戦 パラグアイ
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初戦のパラグアイ戦は、現地時間7月24日にスタッド・ドゥ・ボルドーで行われた。日本は4-3-3のフォーメーションを採用し、キャプテンの藤田や細谷などが先発に名を連ねた。
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▼先発メンバー
1. 小久保玲央ブライアン 4. 関根大輝 5. 木村誠二 15. 高井幸大
16. 大畑歩夢 7. 山本理仁 8. 藤田譲瑠チマ 10. 斉藤光毅
11. 細谷真大 14. 三戸舜介 17. 平河悠
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まずは前半19分、流麗なパス交換から日本が試合を動かした。斉藤のスルーパスに抜け出した大畑がPA内にグランダーのクロスを供給すると、MF三戸がゴールのニアサイドに向け右足を振り抜き、この試合の先制点を奪った。
その5分後、MF平河がパラグアイのMFワイルダー・ビエラと交錯。この接触プレーにはVARが用いられ、ワイルダー・ビエラに退場処分が下された。平河はしばらくプレーを続けていたものの、前半35分に佐藤との交代を余儀なくされた。
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数的有利を得ることになった日本は、後半開始直後にパラグアイにペースを握られた時間が続いたものの、丁寧にボールを捌きながら落ち着いた試合運びを展開。後半9分には三戸がネットを揺らすも、その前のプレーのオフサイドの判定で取り消される場面もあった。
試合が加速していくのは、後半18分。斉藤が個人技から絶妙なクロスを供給し、三戸の2ゴール目をお膳立て。さらに後半24分には再び斉藤のアシストから山本のゴールが生まれた。
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大量リードを奪った日本は後半28分、得点に関わった三戸、斉藤、山本に代えて藤尾、荒木、川崎を投入とすると、この采配が的中。後半36分、荒木のクロスから藤尾のヘディングシュートがゴールイン。
その後も日本は南米王者相手に危なげない試合運びを見せ、後半42分には再び藤尾がゴールを奪い、終わってみれば5-0の快勝。“個の能力では格上“と評価されがちな南米王者を相手に、組織力の高さを見せつけた格好となった。
第2戦 マリ
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グループリーグ第2戦は、現地時間7月27日にボルドーでアフリカ代表のマリと対戦した。勝てば決勝トーナメント進出もほぼ決定という大一番に、日本は初戦のパラグアイ戦から先発メンバー3人を変更。西尾、荒木、そして怪我でチームを抜けたDF半田に代わってメンバー入りした山田をスタメンに抜擢し、4-3-3の布陣で臨んだ。
画像作成/これ松えむ
▼先発メンバー
1. 小久保玲央ブライアン 4. 関根大輝 5. 西尾隆矢 15. 高井幸大
16. 大畑歩夢 7. 山本理仁 8. 藤田譲瑠チマ 10. 斉藤光毅
11. 細谷真大 13. 荒木遼太郎 20. 山田楓喜
출처/Getty Images
4カ月前に敗戦を喫したマリに対し日本は冷静にボールを保持して試合の主導権を握ろうと試みるも、序盤はフィジカルに長けた相手に押し込まれる場面も見受けられた。チーム全体での守備で相手のピンチの芽を摘みながら、徐々にペースを手繰り寄せていった。
しかし左サイドの斉藤、荒木、大畑が自在に動きながら縦を突破してチャンスを作る場面が際立つも、なかなか得点に結びつけることができずに前半をスコアレスで終えた。
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後半に入ると、再び相手にチャンスを生み出される展開に。T・ディアラに最終ラインを突破されあやわという場面もあったが、高井がしっかりと対応してピンチを切り抜けた。
その後もPA内に侵入したムサ・ディアキテのシュートを小久保が好セーブで救ったり、フリーキックからチェイクナ・ドゥンビアが頭で合わせたシュートがゴールポストを強襲たりと、我慢の時間が続いていく。粘り強い守備が実ったのは後半37分。待望の瞬間が訪れる。細谷が相手のマークを振り切り右サイドを突破すると、深い位置からグラウンダーのクロスを供給。ファーサイドにいた途中出場の佐藤がシュート。GKが弾いたところを、山本が詰めて先制点を奪うことに成功した。
このまま逃げ切りたい日本だったが、終了間際に途中出場の川崎がPA内でハンドの判定に。相手のPKという大ピンチの場面となるも、これは相手キッカーが枠を外し、そのまま1-0で試合終了。日本は2連勝でグループリーグ突破を決めた。
第3戦 イスラエル
グループリーグ第3戦のイスラエル戦は、現地時間7月30日にナントで行われた。2連勝で波に乗る日本は、仮に負けたとしても予選D組の首位通過がほぼ確実とあり、マリ戦から先発6人変更のターンオーバーを実施。木村、川崎、佐藤、藤尾、鈴木、内野がスタートから登場した。
フォーメーションは4-3-3。
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▼先発メンバー
21. 内野貴史 6. 川崎颯太 7. 山本理仁 9. 藤尾翔太
13. 荒木遼太郎 18. 佐藤恵允 20. 山田楓喜
序盤から日本は意識的にパス回しからリズムを掴もうと試みるも、予選突破のためには勝利しかないイスラエルのプレスに苦戦し、カウンターを浴びる展開に。それでも小久保の好セーブなどでピンチを切り抜け、徐々に左サイドを中心に攻撃に転じる時間を増やしていった。
それでも得点を奪えずスコアレスで前半を終えると、大岩監督はハーフタイムから山本に代えて植中を投入。しかし前半終盤の勢いは続かず、後半はイスラエルが主導権を握る時間が長く続いた。
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小久保を中心にした守備陣が奮闘し、相手にゴールを割らせない。両チーム共にいまいち勢いに乗り切れない時間が続いていた後半31分、川崎が相手選手との競り合いで腰を痛め、担架で運ばれるアクシデントが発生。この直後に、川崎と荒木に代わって細谷と藤田が投入された。
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すると後半アディショナルタイム、藤田が右サイドの佐藤にパスを展開。その折り返しを細谷がダイレクトでゴールに突き刺し、終了間際に先制点。守護神とエースの活躍が光った日本は、グループリーグ3戦全勝を飾った。