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FIFAワールドカップで直面した難敵との戦い! “森保ジャパン”が見せた「リトリートした守備」の崩し方とは?【プレイバック】
2026年のFIFAワールドカップ本大会出場を目指し、アジア最終予選に臨んだ森保一監督率いる日本代表。10月に行われたサウジアラビア戦では2-0で勝利。続くオーストラリア戦では、最終予選で初めて失点を喫するも、1-1の引き分けで試合を終えた。今回は元日本代表で現在はサッカー指導者の内田篤人が佐藤寿人をゲストに迎え、サウジアラビア戦とオーストラリア戦を徹底的に振り返る。特に日本代表が苦戦した「リトリートした守備」の崩し方について、ボードを使って詳しく解説する。※トップ画像出典/PhotoAC
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難しいアウェーで日本代表がサウジアラビアに無失点で勝利
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アジア最終予選第3節、サウジアラビア代表とのアウェー戦から振り返る。試合開始14分、パスを受けた右サイドの堂安律が中にドリブルし、逆サイドの三笘薫にクロスをあげる。三笘が折り返したボールを守田英正が落として、最後に鎌田大地が押し込み、日本が先制した。
内田氏は「ボールを左右に振って大きく展開する戦略が、ゴール前で見られたのは最終予選が始まってから。みんながこの形を狙えるようになったことが先制につながったのでは」と、チームの理想の形で得点できたと解説。42分にはサウジアラビアのゴール前でパスカット。しかし十分にクリアできず、ルーズボールを拾ったサウド・アブドゥルハミドにシュートを打たれたが、GKの鈴木彩艶の好セーブで失点を免れた。1点リードで迎えた後半78分、左サイドでボールを持った守田が、右の伊東純也へ大きくサイドチェンジ。最後は小川航基がシュートを打つものの、相手ディフェンスにブロックされ、ゴールの枠から外れてしまう。しかし、伊東のコーナーキックのボールを小川が頭で合わせ、貴重な追加点を獲得。「あえて後ろへ下がり、相手の隙を突いたゴールですかね」と小川の狙いを内田氏が解説。その後は無失点のまま、2-0で日本代表が勝利した。
互いのオウンゴール。引き分けで終わったオーストラリア戦
第4節オーストラリア戦は、ホームで行われた。オーストラリアは5バック気味で、5-4-1のブロックを敷く形でコンパクトに守備。このような布陣で開始から5分、板倉滉がヘッドで右サイドの久保建英に大きくパス。さらに受け取った田中碧がフェイントでディフェンスを交わし、縦パスで戻す。久保がシュートを打つも、ボールはサイドネットへ。先制点を獲得することは叶わなかった。
次のチャンスは33分、コーナーキックから久保がクロスを上げるもクリアされ、こぼれ球を南野がシュート。そこに谷口彰悟が飛び込むが、ゴールには届かなかった。谷口の惜しいシーンに、佐藤氏は「ここを狙ってくるのは、ストライカー並みの嗅覚」とDFのポジションから得点を狙うプレーを称賛した。0-0で迎えた後半58分、GK鈴木がシュートを防ぐものの、オーストラリアがボールを拾って細かく繋ぎ、右サイドのルイス・ミラーがクロスを上げる。とっさにキックを狙った谷口が手で触り、さらにオウンゴールとなってしまう。DFだった内田氏が、「このときの体の向きや足のステップは悪くない。唯一後悔があるなら(キックを)左のインサイドからいけばよかったかなと思う」と、小さな判断ミスがオウンゴールに繋がったと解説した。76分、途中交代の中村敬斗が左サイドから縦にドリブルし、ペナルティーエリア内に侵入。クロスを上げたボールがオーストラリアのキャメロン・バージェスのオウンゴールを誘い、ついに同点に追いついた。内田氏は中村のドリブルを見て「足のステップと、ボールを置く位置」の素晴らしさを挙げ、相手DFには止めるのが難しいドリブルだったと称賛した。このまま1-1の引き分けで試合終了となった。
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リトリートした守備のオーストラリアに苦戦した日本代表、今後の対策は?
今回オーストラリアは5バックの前に4人のMFが並ぶ強固の守備陣形で、日本代表はなかなか守備を突破できなかった。これを崩すために、佐藤氏は最終ライン中央の3枚のうち、左右のDFを動かすことの重要性を挙げた。「両脇の選手をいかに動かすかが課題ですよね。守備を乱せれば突破口が開ける」シャドーの選手がセンターバックをつり出すことで最終ラインがずれ、ディフェンスの背後にスペースを作ることができるという。さらに「両脇を動かすためには、(シャドーが)動く場所と動くタイミングを計算しなければいけない」とセンターバックをつり出すためには、出し手がパスを出せるタイミングでシャドーが受けに行くことも重要と説明した。
また佐藤氏は「1つのクロス、1つのパスでは、局面を打開できないと思うのですよ。ボールを保持して出し入れをしながら動かして、相手の目線を常に動かして、一瞬の隙を突く」と、単独のプレーで相手を崩すのは難しいと解説。それを受けて内田氏は「シンプルにもう少し遠くからシュートを打ってもいいのに」と、遠くからミドルシュートを打つことも守備ブロックを崩す方法の1つであると話した。
アジア最終予選では、日本に対してオーストラリアのように引いて守ってくるチームが多い。相手の守備を崩すことができなければ、点を取ることは難しいともいえるだろう。日本代表がどのように戦略を修正していくのか、これからの戦いに注目していきたい。
DAZN『内田篤人のFOOTBALL TIME #204:リトリートした守備の崩し方』より
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています