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NPBスカウトが注目!栃木の150キロ剛腕、信濃のスラッガーたちBCリーグ選抜から「その先」への挑戦

BCリーグ選抜対NPB戦。シーズンを戦い抜いた選手のうち、ほんの一部の選ばれた逸材が集まるショーケースの場。居並ぶスカウトにアピールし、ドラフト指名という栄光を勝ち取れる者はさらに僅か。BCリーグからは1年に数名のごく狭き門だが、高卒1年目でもそのチャンスはある。今年は何人がその切符を掴めるか。

Icon img 20200702 114958 HISATO | 2021/10/09
NPBに挑む選手たちの挑戦を何年も見てきたルートインBCリーグの村山哲二代表は、この日リーグ選抜として集まった選手たちに、二つの言葉を伝えた。

「一つは、BCリーグに来て本気でNPBで活躍しようとして集まっている選手の中でも、君たちは選ばれた人間だから、選ばれなくて悔しい思いをしている人たちが後ろにものすごくたくさんいるから、彼らの思いも背負って二日間闘おうという話をしました」

 10月11日には運命のNPBドラフト会議が行われる。BCリーガーたちはその日に名前を呼ばれることを目標に、自らを鍛え上げてきた。今年の野球にもコロナ禍は大きく影を落とした。社会人・学生・高校生と各地で無観客の試合が行われている中、ルートインBCリーグでもBCリーグ選抜と読売巨人三軍の交流戦が無観客で行われた。

昨年のBCリーグ選抜は東京ヤクルトと1試合のみだったが、今年は9月23日、24日の二日間に渡って開催され、参加選手は合計38人(投手18人・野手20人)。

この二日間、読売ジャイアンツ球場にはNPB12球団からスカウト・編成担当者が集結した。

 村山代表はさらにもう一つ、鼓舞する言葉を選手に贈った。

「チャンスがあるのは2打席とか1イニングだけ。打てるボールは1球来るか2球来るか、というレベル。ストライク1つに、ものすごく執念を持って、打て。投げろ。そういう話をしました。君たちに問われているのは、相手チームに勝つことではなくて、自分自身に勝つ勇気を持つこと。勇気を持って1球目から振れるか。ストライクを投げられるか。その勇気をスカウトの前で見せろと、その二つを話しましたね」

 ◆9月23日 読売巨人軍三軍 対 ルートインBCリーグ選抜 
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【巨人三軍】木下ー山﨑友ー沼田ー山川ー堀岡

【BCL選抜】 高田(石川)ー太田(埼玉)ー利光(埼玉)ー石井(神奈川)ー手塚(栃木)ー田代(群馬)ー堀越(栃木)ー長尾(埼玉)ー日高(神奈川)

 BCL選抜は菊名(福島)、小原(滋賀)、岩田(信濃)、妹尾(茨城)がマルチ安打。岩田は3安打1打点2盗塁と存在感を見せた。投手は全て1イニングずつのピッチング。

高卒ルーキーで注目された高田(石川)が先発し、打者4人を1安打1三振で無失点。手塚(栃木)が150キロを計測。堀越(栃木)は151キロを出して2奪三振と気を吐いた。 

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・岩田幸宏外野手(24歳・信濃・左左)
3打数3安打1打点2盗塁

「よくボールは見えていたし、バットも振れていて体はいい状態でしたね。監督からは『気負わずアピールなんて考えず、いつも通りやればいい』と言われました。打席でもシーズンの通りです。相手投手については何も知識はありませんでしたが、いい感覚で捉えられたと思います。足を見せたかったので見せられたのは良かったです」


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・小原駿太内野手(23歳・滋賀・右右)
3打数2安打1打点

「難しいことは考えず、思い切りよくプレーしようということだけ考えて準備をしました。緊張はしましたが、ワクワク感あるいい緊張だったと思います。指導者の方には、自分から守備について質問をしに行った時に、軸足の重要性と守備についての考え方のアドバイスを頂きました。今までの自分にはないアドバイスだったので、自分の世界が広がったような気がしました。実際に2安打打てたことは手ごたえがありました。しかし、周りの選抜の方たちは自分よりも鋭い打球を打っていたし、守備の面でもまだまだ成長できるところが多くあることを実感しました。3打席とも同じ投手が相手だったので、前打席の結果からどう攻めてくるか考えながら打席に立つように意識しました」 

・阿部一心外野手(23歳・新潟・右左)5打数無安打

「自分の長所である守備・肩・足を第一に、更に伸ばせるように練習していました。久しぶりに実戦をするような感覚があったので、シーズンを思い出しながらプレーしました。選抜までに重点的に伸ばして感覚を忘れないように意識していたことは出来ていたと思います。あとは、スカウトの方にどのように見て頂いたか次第です。自分自身の長所に関しては思う存分、後悔なくプレー出来ました」

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 ・高田竜星投手(19歳・石川・右右)
1回17球無失点

「いつも通りの投球が出来るように心がけました。今シーズンの夏場にオリックス・阪神との二軍戦があり、その時がNPB相手の初登板だったので緊張しましたが、今回はそこまで緊張感はなくプレー出来ました。指導者含め球団の選手からは投球術などアドバイスを頂いて臨みました。今ある実力を1イニングではありましたが、出し切れたと思います。相手チームは各選手体格が良かったのが印象強かったです」 

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・堀越歩夢投手(23歳・栃木・右右)
1回25球無失点2奪三振

「シーズンから時間が空いたので、怪我をしないようにトレーニングをし、出力不足がないように準備しました。特に緊張はなく、結果的に三者凡退で抑えられて、ストレートとフォークで三振も取れて、自分の見せたいところが見せられたと思います。相手についてはBCだったら空振りするところをファールにされるし、振って欲しいところも変化球を見逃されるし、レベルの高さを感じました」 


・太田大和投手(19歳・埼玉・左左)1回19球2失点

「周りと自分を比べて背伸びすることがないように、自分の準備をしっかりしようと心がけました。球場入りした時は緊張しましたが、体を動かし始めたらだんだんと緊張は無くなっていきました。結果については自分の力不足を実感しました。NPBは何か一つ秀でている特徴がなくては行けない場所だと思います。そして自分がシーズンを通して感じたことは、悪い時にこそ修正できる力を持っていることがとても重要だと感じました」

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・長尾光投手(19歳・埼玉・右右)1回23球無失点

「二日前に軽くウエイトをしました。当日緊張はしませんでした。チームメイトの辻空さんからマウンドがかなり硬いからいつもと違うということは頭に入れておくようにと言われました。本調子ではなく残念な結果です。相手はBCリーグと違い、全員がしっかりボールを見ていると思いました」

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・利光康介投手(24歳・埼玉・右右)
1回10球無失点1奪三振

「今持っている力以上ではなくて、今持っている力を100%出せるように、いつも通りの試合への準備をしました。もちろん緊張はしましたが、楽しみの方が勝っていました。淡々と時が経っていってしまった感じはあります。もう少しやれたかなと思っています。相手は自分より年下の選手ばかりでしたので、負けられないという気持ちと共に、NPBの一軍を目指して、僕らと同じように挑戦している姿を尊敬しています」 

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・石井翔投手(24歳・神奈川・右右)
1回22球1失点

「いつもやっているメニューをして準備をしていました。特に緊張もなく、楽しんで投げることが出来ました。対戦相手には特別気にして投げようと思わず、いつも通り投げようと思っていました」 

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・日高拓海投手(23歳・神奈川・右右)
1回14球無失点1奪三振

「身体をもう一度作り直し、さらにレベルアップした状態を作りました。実戦感覚を取り戻すために、イメージトレーニングを入念に行いました。9回に登板するということが決まっていたので少し緊張はありましたが、普段の試合と変わらず臨むことが出来ました。ストレートでも変化球でもカウントが取れたことは収穫になりました。決め球の精度も良かったです。マウンドがいつもより固かったため、多少フォームにバラつきが出てしまったので、対応出来るようにしたいと思いました。対戦した相手については、自分の思い通りの球がいけば抑えることが出来ると思いました」 

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・手塚俊二投手(23歳・栃木・右右)
1回22球無失点

「プレッシャーの中で準備をするのはとても難しかったです。かなり緊張して100%の力を出すことはできませんでした。スピードボールが持ち味なので、持ち味は出せたと思います。NPB選手は体の大きさや打球の質、投げる球の質がすごかったです」

 ◆9月24日 読売巨人軍三軍 対 ルートインBCリーグ選抜  

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【巨人三軍】
與那原ー阿部ー田中優ー山川ー山﨑友ー平井ー堀岡

【BCL選抜】 

鈴木(信濃)ー渡邉(富山)ー久能(茨城)ー野里(新潟)ー松永(富山)ー佐渡(信濃)ー松島(福島)ー荻野(群馬)ー中園(新潟)

 初回の攻撃では谷口(富山)、井上(信濃)の長打で得点。5回には井上(信濃)がスリーランを放ち、長打力をアピールした。樋口(埼玉)も2安打し、内野に加えて外野守備も見せた。投手では渡邉(富山)が打者3人を11球で抑えている。

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 ・井上浩輝外野手(24歳・信濃・右左)
3打数2安打3打点1HR

「試合感覚も空くことがなかったですし、緊張感なく入れました。調子も良かったです。指導者の方からは『アピールしてこい』って言われました。(山﨑友投手からのホームランについて)打ったのはツーシームです。全部の打席でホームランを狙ってました。いい結果に繋がってくれてよかったです。シーズン中とは全く違う目的なので、変なプレッシャーがなく伸び伸び出来ましたし、楽しむことが出来ました」
 
・谷口佳祐捕手(23歳・富山・右右)
2打数1安打

「試合までは、アピールしたい点を重点的に練習しました。当日は緊張しました。でも、良い緊張感の中で試合にのぞめました。結果ではなく自分を出す事をアドバイス頂きました。内容も悪くなかったですし、しっかりと自分を出せたのでよかったです。同じキャッチャーの山瀬選手の肩にビックリしました」 

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・熊谷航捕手(内野手・22歳・新潟・右左)
2試合4打数無安打1四球

「選抜試合まで期間が空いていたので、下半身強化のためにウエイトトレーニングとランニングをしました。引き付けて自分の間でスイングすることをアドバイス頂いて心がけました。巨人の投手は低めに投げ切れているのがとても徹底されている。NPBの選手は球の質が良いので、しっかり捉えないと飛んでいかないと実感しました」。

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・妹尾克哉内野手(23歳・茨城・右左)
2試合5打数2安打1盗塁

「NPBは練習量も環境も違うと思うので、体の大きさやパワーに違いも感じましたが、当日はアピールの場になるので、最後まで全力で、たとえミスをしたとしても前向きにプレーをしようと決めていました。1打席目は力んで固くなって三振してしまいましたが、2打席目以降はしっかり修正して強く振ることができ、ヒットも出たので良かったと思います。BCリーグ選抜として参加し、年上の選手もたくさんいて、技術や精度の高さなどを間近で見ることができて、学ぶこともありました」

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 ・長南有航内野手(21歳・栃木・右左)
2試合5打数1安打

「普段と変わらない調整方法で当日に臨みました。緊張はしましたが、自分の持ち味を生かせたと思います」

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 ・樋口正修内野手
(23歳・埼玉・右左)2試合6打数2安打

「自分は足が武器なので、この足をスカウトの方々に見てもらうために、最大限の準備をしました。1日目は緊張しましたが、2日目は大丈夫でした。角監督には縮こまったバッティングをしているから、もっと大きく大胆にタイミングを取るようにとアドバイスを頂きました。栃木の寺内監督には守備のアドバイスを頂きました。2日目に打ったライト前ヒットは初球の真っ直ぐを一発で仕留めることができ、手ごたえを感じました」 。

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・速水将大(21歳・富山・右右)
3打数無安打1犠打

「体のケアを入念に、練習では、体の状態の確認をし、最高のパフォーマンスを発揮できるよう準備しました。当日は全く緊張しませんでした。相手については、巨人の内野手の守備を見ていて、凄く形にこだわってやっていると思いました。NPBの世界との距離感を掴めた感じがします。レベルが違うと感じた選手も何人かいましたが、BCリーグの選手も負けてないと思いました」


 ・石川慧亮外野手(18歳・栃木・右右)2試合3打数1安打1打点

「当日まではひたすらバッティング練習をしました。緊張はなく、楽しくできました。自分の持ち味の思い切りの良さと出せとアドバイスを頂いて臨みました。実際に試合をしてみると、BCリーグとは全然違うと感じました」 

・石森亨外野手(25歳・新潟・右左)2打数無安打1四球

「最高のパフォーマンスが発揮できるように準備をしました。あまり緊張はしませんでしたが、手ごたえは無かったです。NPBに行くために必要なことは、自分の長所をどれだけ伸ばせるか。技術が大事なのはもちろん、それ以外の面ももっと大事になると思います」

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・中村勇気外野手(23歳・石川・右左)
2試合1打数無安打・代走・守備

「とにかく僕は総力がアピールポイントなので、どの場面でも走れる準備をしていました。代走・守備交代のみ起用となりましたが、今の実力を全て出せたかと思います」 ・中園大樹投手(21歳・新潟・右右)1回26球無失点1奪三振「手ごたえはありません。不甲斐ない投球をしてしまい、自分の力のなさを痛感しました」 

・野里慶士郎投手(19歳・新潟・右右)1回22球無失点1奪三振

「とても緊張しましたが、自分の武器はNPBのセンスでも通用することが分かりました」 

・渡邊潤投手(23歳・富山・左左)1回11球無失点

「 シーズンの最終登板から中7日と時間に余裕があったため、疲労をしっかり抜くこととフォームの修正をメインに準備をしました。石川・富山の合同チームでオリックスさんと阪神タイガースさんとの試合を経験していたので、その時に出た反省も踏まえて試合に望みました。吉岡監督から『選抜だからといって変わった事をする必要はない。1イニングだけの投球となるか自分の持ち味である相手をしっかり見て投球することをしっかりやれるように』と言われたので、そこだけを意識して取り組みました。

バッティング練習からやはりしっかり振ってくる打者が多いなと感じていたので、高さだけは間違えないようにと投球しました。自分の持ってるボールをしっかり投げることが出来、結果3人で抑える事が出来たのでよかったです。今の状態で納得いく球は投げられましたが、まだまだ上に通用するボールが自分にはないと思いました」
 

・松永健二郎投手(24歳・富山・右右)1回16球1失点1奪三振

「レギュラーシーズンの時と同じようにいつもの準備をして臨みました。BCリーグ選抜は去年も経験させて頂いていたので、緊張はしませんでした。いつも通りの自分のピッチングができたと思います」


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村山代表が、二試合を見ての感想と印象に残った選手を語ってくれた。

「二日間を通して、シーズンの終盤で心と体のバランスがすごく上がってきた人間が、予想通り素晴らしいパフォーマンスを出したなと思いましたね。

僕が一番感じたのは、投手では堀越(栃木)、高田(石川)あたりがすごいパフォーマンスをしたなと。鈴木(信濃)も良かった。野手では信濃の3選手(岩田、井上、澤畑)が抜けてた感じがしましたね。あと樋口(埼玉)小原(滋賀)あたりも良かったです」

 リーグ選抜戦の結果としての数字は、必ずしもドラフトに直結するわけではない。だがスカウトの目の前で、彼らは全てを賭けて勝負して見せた。あとは運と縁だろう。

今年もNPBから多くの選手が戦力外通告を受けている。1年で見切られることもある厳しい世界だ。それでも、皆そのスタートラインに立つことを目指している。

「その先」を自分の力で切り開くために。一人でも多くの独立リーガーの名が、当日呼ばれることを願っている。


(※取材制限のため、選手のコメントは球団経由、写真はBCリーグ事務局提供による)

公式記録(9月23日)

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公式記録(9月24日)Thumb 0924e5b7a8e4babaefbdb0bcle981b8e68a9c




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