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コロナ禍のキャンプで得たものは。燕の大砲は高みを目指す

2021年はコロナ禍が大きく影を落とし、各地で無観客のキャンプ開催となった。地域との交流も制限され、報道も感染対策を施した上で限られた範囲内になる。応援するファンの姿のない今年のキャンプは、どんな姿だったのだろうか。  

Icon img 20200702 114958 井上 尚子 | 2021/03/25

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沖縄県浦添市は、那覇市と宜野湾市の間に位置する。県庁や国際通りなど那覇の中心地からは、車であれば30分足らず。バスやゆいレールを使っても行ける、便の良い場所だ。2000年に東京ヤクルトスワローズが春季キャンプ地としてから、今年で22年目を迎えた。

本来ならば、東京ヤクルトスワローズ浦添協力会との懇親会がキャンプイン前日に行われたり、キャンプ中に野球教室を行ったり、新人選手が市内で観光したり、様々な交流が行われる。

しかし、今年は交流もなく、選手はホテルから出ることを禁じられている。沖縄県でも独自の緊急事態宣言が出されたため、那覇市内の飲食店は20時までの時短を求められ、繁華街も閑散としていた。

とにかく感染者を出すことなくキャンプを完遂すること、それが一番の優先事項となる1ヶ月だった。 「おはようございます!」 居並ぶ報道陣に向けて朝の挨拶を軽くしていく選手が多い中、41歳の石川雅規は、語尾までしっかりと挨拶をしていく。

ファンがいればサインや写真などの対応も丁寧に行い、終わると頭まで下げる人柄は、ファンがいなくてもそのままだ。ロープである程度距離は隔てられるが、選手たちの様子はよく分かる。

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ANA BALLPARK浦添では、報道陣の入り口は三塁側のみ。スタンド最上段には臨時に記者席が設けられ、机と電源が使えるようになっていた。外の道路はある範囲内のみ通行可能だ。

関係者用の通路にはロープが張られ、選手・球団関係者との距離を保っている。報道関係者は自由に選手を取材することは出来ないが、インタビューエリアは設けられ、試合後の監督や何人かの選手が囲み取材を行っていた。 

報道陣には沖縄渡航前72時間以内のPCR検査が義務付けられた。長期滞在する報道関係者は、1週間ごとにPCR検査をする。那覇に読売ジャイアンツが作ったPCRセンターは球団も報道関係者も使うことが出来、大いに役立った。 

ANA BALLPARK 浦添(浦添市民球場)は、浦添運動公園内にあるため、市民も多く訪れる。公園自体を立ち入り禁止にすることは出来ないため、球場周辺に立ち入り制限が設けられた。報道陣は報道受付で検温を行い、パスをもらう。検温、マスク、アルコール消毒は必須事項だ。 

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取材を行ったのは、2/26~2/28で練習試合のある3日間。午前中はヤクルトが練習を行う。全体でアップをし、キャッチボール。野手は守備練習からバッティング。投手陣はブルペンでのピッチングもある。試合のある日は早めの進行だ。そのうちビジターチームも場所を分けて練習を始める。 

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東北楽天ゴールデンイーグルスとの練習試合では、昨年まで楽天で投手コーチを務めていた伊藤智仁コーチが、東北の投手に声をかけるシーンも見られた。練習試合だけに、シーズン中よりも交流は盛んだ。

ある時には、伊藤コーチが内川聖一を連れて三塁側へ行き、楽天の金森栄治コーチに話をしていたこともある。その手振りからしてバッティングの話をしているようだった。内川から言い出したのだろうか。38歳が貪欲に向上心を持ち続けている様子が見て取れた。 

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2/27には田中将大の先発とあって、報道陣も色めき立っていた。選手もその投球を見たいと思ったようで、普段は試合中一部のエリアで登板しない投手陣の姿が見られるものだが、この日はネット裏や内野席の方にも多くの選手の姿があった。

スマホを向ける者もあり、ネット裏の球筋の見やすい位置には、田中将を目標と仰ぐ奥川恭伸ら若手投手たちが目を輝かせて座っていた。立ち上がりの失点もあり、田中将自身は納得のいくピッチングではなかったようだが、ヤクルト投手陣には刺激になったことだろう。 

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田中将からタイムリーヒットを打った村上宗隆だが、囲み取材を受けた際の様子が印象的だった。 

「ワクワクしました。マウンドでは迫力があって、近く見えた」と語った村上だが、「幼少時代からテレビで見ていたと思うが憧れはあったか」という記者の質問には「僕は野手をやっていたので、憧れはあまりありませんでした」と苦笑。対策も特にはしなかったという。

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「メジャーの最前線で活躍された方なので、すごくいい刺激になりました。僕ももっともっと高みを目指したいと思いました」と語る村上。雲の上の存在ではない、実際に対戦出来る相手として歓迎しているように見えた。

「思い切って真っ直ぐ狙いでいったので打てましたけど、まだ相手投手も登板2回目ですし、まだまだ。これから、この先交流戦の時に本当に(どんな投手かを)感じるんじゃないかと思います」。その時の対戦を楽しみに、自分ももっともっと頑張り、調子を上げて迎え撃つという姿勢を示した。

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新型コロナ感染というマイナスから始まった2021年だったが、順調にプラスを積み重ねてキャンプを終え、オープン戦でも打撃好調な4年目の村上宗隆。「3割30本」が普通の目標に聞こえてしまうほどの21歳は、とにかく「今年はタイトルを獲りたい」と何度も強調していた。  

浦添運動公園の入口から球場までは、例年であれば、数々の屋台が並び、地元の人たち、家族連れや多数のファンの姿が見られる。焼きそばや焼肉、タコライス、沖縄そば、サーターアンダギーや黒砂糖のわたあめ…。

そうした店は今年はないが、公園内の食堂「さんさん亭」では、ステーキ弁当の食べ放題や、沖縄そば、ラーメンなどを提供し、地元の人々とともに報道陣もお世話になった。

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選手の幟旗は今年も立ち並び、風に靡いていた。ヤクルトの公式グッズ売り場がまた設けられ、「つば九郎神社」も作られた。そして浦添協力会が名物で作ったヤクルトグッズを売るブースもあった。琉球ガラスのぐい飲み、「浦添織」のお守り、レザーのキーホルダーなどオリジナルグッズが並ぶ。ファンが訪れることのないキャンプ地では、グッズ販売は赤字覚悟だろう。

それでも地元の人々の作るスワローズグッズは、とても温かい印象の品が多い。
選手たちにも、ファンのいないキャンプは寂しい、モチベーションを保つのが難しいという声が多かった。来年は、ファンが多く訪れる賑やかな春季キャンプであることを願いたい。

【取材協力】東京ヤクルトスワローズ